閉鎖性水域グループ

我が国では,湖沼・貯水池(ため池)は,古くからそして現代でも,貴重な農業用水源として利用されています.しかし,閉鎖性水域とも呼ばれる湖沼・貯水池では,農業排水・畜舎廃水・生活廃水による汚濁物質の流入負荷量の影響を受けて,有機汚濁・富栄養化といった水環境問題を抱えています.特に,近年の気候変動に伴う温暖化や集中豪雨の頻発化の影響により,水環境の劣化がより深刻化しています

有機汚濁とは,水の濁りによる透明度の低下が引き金となって生じる水質汚濁現象です。専門的には,寡少な水中光環境による酸素生産量の低下と,水温成層による酸素供給量の抑制が引き起こす酸素欠乏(貧酸素化・無酸素化)のことであり,特に無酸素化が深刻な水環境問題を連鎖的に生じさせます。

富栄養化とは,農業排水・畜舎廃水・生活廃水の流入を通じて,水域に窒素・リンといった栄養塩が過剰に供給されることで,植物プランクトンが大量発生する汚濁現象です。アオコに代表される藻類の異常増殖は,農業用水の『質』の劣化による水資源量の減少と,水域が有する多面的機能(景観創出,親水空間,ビオトープ等)の喪失へと繋がり,深刻な水環境問題の一つです。

以上を背景に,農業農村工学の立場から,地域水資源の健全な維持・管理を通じた持続的な農業農村地域の発展に貢献できるような研究を進めています.特に,農業農村地域の重要な水資源を担う湖沼・貯水池の有機汚濁・富栄養化問題の解決に資する水環境学的,水質工学的な教育研究を,九州大学伊都キャンパス内の調整池主要なな研究サイトとして展開しています。研究背景・研究戦略・研究テーマを下記の画像にまとめています(クリックすると,大きく表示されます).また,やや具体的な研究テーマを下記に挙げています.

研究背景

研究背景:有機汚濁・富栄養化による水環境問題とは?

研究戦略

研究戦略:環境水理学的・水質工学的な研究アプローチとは?

研究テーマ

研究テーマ:環境水理学的・水質工学的な研究テーマ3本柱

研究テーマ

もう少し詳しく研究テーマを知りたい方はここをクリック(Youtubeで公開の説明動画へ)

  

最近の主な研究テーマ

  • 生態系モデルベースの水理-水質モデルによる湖沼の水環境解析を通じた有機汚濁・富栄養化現象の定量的評価
  • 地球温暖化が閉鎖性水域の水環境動態に及ぼす影響の定量的評価と将来の気候変動を踏まえた水環境リスクヘッジ
  • 水質汚濁水域の水環境修復に向けた水面冷却・冷水塊沈降を利用した水質改善技術の開発
  • 有機汚濁が進む閉鎖性水域の水環境保全に向けたLED水環境修復技術の実用化と高度化
  • ウルトラファインバブル技術を利用した富栄養化水域の水環境修復技術の開発(令和5年度から着手)